ヴィジュアル系から学ぶべきこと

初めに言うと僕はこれまでヴィジュアル系(以下V系)バンドをやったことがないし、おそらくこれからもないでしょう。
正直なところ文化的にそれほど興味があるわけでもありません。可能性的にまだまだ出来ることはあるでしょうが、そこに積極的に関わろうとも思いません。
一度ぐらいやっておけばよかったとも思いますが、そもそも僕はもういい歳のおっさんなので、仮に今やろうとしても大変な無理があります。
V系のライブを観に行ったことも数えるほどしかありません。これは今後増えるかも分かりませんが。

しかしそれでも日本の(非V系の)バンドマンは、少なくともいわゆるプロ志向であるなら、V系から多くのことを学ぶ必要があると常々思っています。
なぜなら「売れる」ことに対する意識、覚悟が違いすぎるからです。

プロ志向でバンドをやるということは、ベンチャーで起業するようなものです。
もちろん「プロ志向」を名乗る上で面倒な手続を踏む必要はないし、言ったもの勝ちみたいなところがあるので厳密には違いますが、売れることを一つの目標とするならそれはビジネスとして考えなければいけません。
twitterやtogetterまとめでも何度も言ってるのですが、「良い音楽をやっていれば勝手にお客さんはついてくる」なんていうのは幻想です。ごく一部の強運に恵まれた人たちだけの話です。そんなものをアテにしている時点で「プロ志向」とは呼べません。
まぁもし自分が鷲巣様のような剛運の持ち主であると思うならそういう人は勝手にやればいいと思いますが。

さてビジネスとして考えるなら、売れるためには「需要のあるところで勝負する」か、「需要を作り出す(これをイノベーションと呼ぶ)」かのどちらかです。
需要を作り出せるほど才覚のある人ならそれをすればいいでしょう。ただそれを出来る人は人類の2.5%ほどだと言われています。
すると現実的に考えるなら「需要のあるところで勝負する」ことになります。

では音楽、とりわけここでは主に生演奏でプレイされるロック/ポップスに絞って考えますが、それらに需要はあるでしょうか。
無くはありません。CDが売れない売れないといってもちゃんと売れている人たちはいるし、大型フェスには毎年数万人単位で人が集まります。
つまり音楽だけで食える人はごく一部にしても、副業程度の収入源となっている人たちはそれなりにいるわけです。
そしてここに落とし穴があります。

現在V系を除きプロ志向で音楽をやって収入とすることは、大規模フェスに出ることとほぼイコールとなっています。なぜならマスメディアが効果的な宣伝媒体として機能しなくなった近年では、「既に売れている人たちと同じステージに立っている」こと以上に効果的な宣伝が存在しないからです。
(実は他のやり方で食えている人たちもいるのですが、それはまた別稿で)
すると重大な矛盾が生じます。

フェス主催者は良い音楽をやる人を優先して出演させたいのでしょうが、その出演者を決めるのも人間です。であれば音楽の良い悪いとは別に、主催者の好みに沿った音楽が優先されてしまうのは当然と言えます。また興行的に売れている音楽をある程度まで優先するのも必然でしょう。
ということは、「売れるためにフェスに出ることを目指すなら、その主催者が気にいるような音楽、或いは売れやすい音楽を目指す」ことになります。また大型フェスが定着した現在ではその客層もそれぞれ分化が進んでおり、ますます「そのフェスの客層に合った音楽」でないと出演が難しくなっています。ロキノンはその典型例でしょう。

自分のやりたい音楽が、まさにその気に入られる音楽であれば何も問題はないでしょう。しかしそうでないなら、売れるために、出たいフェスに合わせて
「やりたい音楽を曲げないことには先に進めない」
という状況に陥ります。普通は「やりたいことをやる」ために音楽を始めるのですからこれは大変な矛盾を突きつけられることになります。

結局のところ、大型フェスはアマチュアミュージシャンに夢を与えましたが、しかし「良い音楽を追求するだけでは売れることはできない」という日本の音楽シーンが昔から抱えている問題を解決するには至らなかった、というのが僕の見解です。
なおフェスにまつわる問題点についてはまだいろいろ言いたいことがあるのですが、ここでの本題ではないので別稿に譲ることにします。

だいぶ前置きが長くなってしまいました。
既に触れましたが、V系シーンにはフェス信仰とは全く別の力学が働いています。
もちろんV系にはV系のフェスが存在しますが、それは売れるための登竜門というより売れたバンドを集めたお祭りなので、他のフェスとは存在理由が根本的に違います。
それを語るためにはまず、V系の定義を明らかにしなければならないでしょう。

ご存知の方も多いでしょうが、V系とは音楽ジャンルを表す言葉ではありません。メイクや衣装、ステージングや歌詞がいわゆる「V系らしい」もっと言えば「V系好きな女子(通称バンギャ)」に好まれるものであれば何でもいいのです。
定義になってねぇじゃねぇか、と言いたい方も多いと思いますが、これが実情なので仕方ありません。
そしてそこにチャンスを見出した若手バンドが増えています。繰り返しますが、V系とは音楽ジャンルを表す言葉ではありません。
それが何を意味するか、この時点で僕の言いたいことに気づいてる方もいるとは思いますが、前置きが長すぎたので続きます。もう少しお付き合いください。

次回、まずは「V系の登場および隆盛は日本において必然であった」ということから進めていこうと思います。

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