オーディエンスとの共犯関係とマーケティングと

では前回の続きとして、まずボカロシーンとの協力、共存について考えたいと思います。

先に僕個人としては、以前の記事【箱庭遊びとしての音楽シーン(2)】
で示したように、まずボカロ音源発表→その楽曲の演奏してみた動画発表→ライブという導線を作るのが今後スタンダードになっていくと思っています。
「それ別にボカロいらなくね? いきなり演奏動画でよくね?」と思う方も多いでしょうが、現在の音楽環境でリスナーが最も「自分から新しい音楽を探す」ことに積極的なのはニコニコ動画を利用する層なので、ここにアプローチするためのハブとしてボカロ楽曲を発表するのはマーケティングとして当然と考えます。
ここでボカロをバカにしている層に考えて欲しいのは、「ボカロという技術をバカにしている」のか、「現在評価されているボカロ曲をバカにしている」のか、「ボカロ曲ごときで満足しているリスナー層をバカにしている」のかということです。

まず技術的な面についてですが、これは以前にも述べたように時間が解決してくれます。またその技術的に不満のある歌を、自分の「歌ってみた」によってアップグレードすればそれでいいのではないか、とも思います。
また後者二つについてですが、メジャーのチャートに登場するということはニコ動界隈を超えた一般層に売れているということなので、これは結局「売れ線J-POPのリスナーに自分の音楽が理解されると思えない」と言っているに過ぎません。
一方ニコ動界隈にもマニアックな音楽好きはそれなりの割合で存在するし、またやはり以前紹介したように極めて質の高い楽曲を発表し、きちんと評価をうけているボカロPも存在します。なのでこの理由をもって挑戦しないのは単純に逃げだし甘えだと僕は思っています。むしろ「自分の音楽をもってニコ動界隈の音楽好き層を掘り起こそう」ぐらいの気概を持ってトライして欲しいものです。

さて一方、「歌ってみた/演奏してみた動画」文化は盛り上がる一方で衰退の兆しも見えはじめています。理由は単純に、下手でもとりあえず発表すればそこそこの視聴者が集まることで、全体のレベルが非常に低下していることです。これは「演奏してみた」系のイベントをライブハウスで主催するボカロPから話を聞いたこともあるし、またその状況を皮肉ったボカロ曲「インターネットカラオケマン」が最近話題になったことを知っている人も多いでしょう。

これは逆に見ればチャンスです。レベルが低いことによって飽きられているのなら、実力のあるミュージシャンが質の高い歌、演奏を発表することで一気に注目を集める可能性もあります。ボカロ曲をわざわざ作るのが面倒或いは難しいなら、既に評価されている曲を質の高い「演奏してみた」動画でカバーすることで自分たちの楽曲へと視聴者を誘導することもできます。そういった活動をするミュージシャンが増えることでボカロ系リスナーと、ライブハウス中心のリスナーとの間で流動性が生まれるかもしれません。そうなればなおさら活動しやすくなるのは言うまでもなく、またせっかく生まれた新しい市場を再活性化させることにも繋がります。

マーケティングの基本はV系について述べたのと同様、まず顧客のいるところを目指すことです。何の導線も張らずにいきなりライブハウスに出演したところでそこにお客さんはいません。もちろんコンスタントに100人近く動員できるバンドも少なからずいますが、実績のないミュージシャンがそういうバンドと共演させてもらえることはまずありません。
繰り返しになりますが、楽曲や演奏に自信があるなら、なおさら集客のために盛り上がっている市場に食い込む方法を考えるべきです。

さて僕がこうして「ボカロ市場に食い込むための活動」を執拗に勧めるのを鬱陶しく思う人もいるかもしれません。
「金のために音楽やってるわけじゃない」というのはよく耳にする言い訳です。もっとも言い訳でなく本当にそう考えている人も多いと思いますし、僕自身も金だけを目的にやっているわけではありません。そもそも売れてないですし。また純粋に音楽の可能性と向き合うことでしか発明・発見出来ないような音楽も存在するでしょうし、そういう人たちがいてくれないと困る、という思いもあります。

ただ少なくともポップミュージックに携わりながら音楽を続けていくつもりであれば、市場の変化、オーディエンスの意識や振る舞いの変化を無視することは不可能です。なぜならポップミュージックという文化においては、オーディエンスとのある種プロレス的な共犯関係の中でしかそれが「良い音楽」として存在することは、ほぼ出来ないからです。これはJ-POPにおいてもV系においてもアイドルにおいてもロキノン系においてもそうですし、アメリカで一番売れる音楽ジャンルが実はカントリーであることも、黒人の多くがブラックミュージックしか聴かないのも同じことです。

要するに「盛り上がっている市場に食い込む」ということは「共犯関係を積極的に結びたがっているオーディエンスが沢山いる場所に食い込む」ということなので、現在の日本で活動する以上、V系をやらない(なれない)ならボカロを中心としたニコ動界隈で勝負するのは当然と考えるべきでしょう。

しかし僕がボカロにこだわる理由はそれだけではありません。
ボカロおよび歌ってみた/演奏してみたの盛り上がりをきっかけに、アマチュア/インディミュージシャンの在り方そのものが全く変化する可能性がある、と僕は考えています。

とその内容まで述べようと思っていたのですが長いので続きます。

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