初心者向けバンド講座(改訂版)-バンド始動編

さて無事にバンドを結成できたとします。
或いは一部サポートの場合もあるかと思いますが、どのような形でメンバーが集まったにせよ、既に一回以上スタジオに入って全員の好みや実力のほどはある程度分かったと思います。ここで本格的に活動を始める前に、必要なのは充分なミーティングです。これは遊びのバンドであっても例外はありません。

事前に好きなバンドや大まかな活動方針は確認してあると思いますが、初対面のときはまずバンドに加入するため猫被ってた人が「実は…」というのはよくある話です。時間は充分にあるのですから、本音を引き出せるようにしっかり腰を据えてミーティングしましょう。
また、ミーティングと言うと構えてしまうかもしれないので、飲み会や、酒が飲めないメンバーがいるなら鍋をつつくなどでも構いません。中には直接会うとなかなか本音を言えないような人もいるので、SNSやチャットを使うのもよいでしょう。そのあたりはメンバーの人柄に応じて工夫してください。

このミーティングの目的は、前回冒頭で述べた「メンバーの温度差」を調整するためです。例えば全員が完全にコピーしかやるつもりがないというならさほど問題ないですが、趣味/アマチュア志向であってもコピー中心にやりたいのかオリジナル中心にやりたいのかで活動の仕方は変わってきます。
ましてやプロ志向だと、コピーから徐々にオリジナルへ向かうのか、最初からオリジナル中心でやるのかだけでも相当な温度差があります。コピーにしても、同じバンドが好きな中で好きな曲がそれぞれ違うことは多いので、やはり擦り合わせる必要はあります。好きじゃない曲は誰だってやりたくないのですから。

なおこの段階で「自分がやりたいことはカッコいいに決まってるのだから全員それに付き合え」とか考える人は、そもそも集団行動に向いてないのでバンドをやることそれ自体を考え直したほうがよいと思います。ただ稀にノエル・ギャラガーみたいな、周囲を全てコントロールしてこそ力を発揮出来る人もいるので、そのぐらい自分に才能があると思う人はどうぞ好きにしてください。

ともあれこのミーティングを通じて、メンバーそれぞれの温度差を均した「バンドの温度」を全員で共有してください。もともと温度差がほとんど無いならいいのですが、ある程度の差がある場合、必ず温度の低いメンバーに対して不満を感じるようになります。しかしそれは理不尽な不満なのです。
これはバンド云々以前の問題なのですが、メンバーは他人です。人格も育ちも知識も才能も、或いは性別も自分とは違う人間です。違う人間に対し、一つの対象に自分と全く同じ感情を持たせようとするのは不可能です。同じ音楽に感動したとしても、その感動の内容はそれぞれ違うのです。

なので、自分の温度に対して相手のそれが低いからといって不満を表明しないでください。全員で共有した「バンドの温度」に対してあまりに低いと思ったときにはそれを指摘するべき場合もあります。ただここでも、相手の人格に対する敬意を忘れないよう注意してください。
相手の知らないことを自分が経験し知ってるように、自分の知らないことを必ず相手は経験し知っています。どれほど論理的に筋が通っていたとしても「なんで俺と同じように考えらんねぇんだ!」みたいな考え方のほうが不自然なのです。どうしてもそれを他人に望むなら、まずは「どうして相手がそう考えるのか」もっと言えば「どうして相手がそう感じるのか」を考え、共有までは不可能でも、出来ることなら共感しましょう。いくら理性的に振る舞おうとしたところで基本的に人間は感情的な生き物なので、結局は相手の感情に訴えかけなければ話は通じないのです。

何をどうやっても思いが通じそうにないと思ったなら、思い切って解散なり脱退なりするのもよいでしょう。何度でも言いますが、金にもならないのに楽しめないバンドなんてやる必要はないのです。活動を長く続けるほどしがらみや思い入れによって辞めづらくなるので、ダメだと思ったら早めの解散をオススメします。

初期のバンドミーティングで話し合うべき内容ですが、どんな音楽をやりたいかだけでなく「どんなバンドになりたいか」について一層の時間を設けてください。
例えばプロ志向であれば、とにかく売れることを目指すのか、それとも売れ行きはそこそこでも音楽的なこだわりが評価されることを目指すのか。遊び志向でも、ただ自分たちが楽しみたいだけなのか、それとも自分たちが楽しみつつそれをショウとしてきちんと見せたいのか、など。
なりたいバンド像はそれこそバンドの数だけあるでしょうが、それに応じて活動の仕方も大きく変わってくる場合があります。

例えば遊び志向で自分たちが楽しみたいだけの場合、そもそもライブをやる必要があるかどうかを考える必要があります。お客さんの目を想定しないのであれば、スタジオセッションだけで充分かもしれません。ライブをやるにしてもライブハウスのブッキングは構想から外したほうが良いでしょう。
ブッキングライブのお客さんは自分たちが呼んだ人たちだけではないので、あまりに内輪ノリで完成度の低い、または不真面目な(ように見える)ライブをやると他バンドのお客さんが白けてしまう場合があります。これはライブハウスにとっても他バンドにとっても面白くありません。

なので「パフォーマンスの質には自信がないし内輪ノリが強いけど、どうしてもライブハウスの音響や照明がないと気分が乗らない」というバンドは、ブッキングライブではなくホールレンタルプランを利用するべきでしょう。金額は高い(10~20万円ぐらい)ので、似た活動方針の知人、友人を誘って共同開催すると良いかもしれません。
なおこれはプロ志向であっても、実力が備わってないなら同じことです。ライブハウスのブッキングライブに出るのは、自分たちのパフォーマンスが他バンドのお客さんをも楽しませられる自信が付くまでは止めておきましょう。
ライブの経験を積むにあたっては、ライブ可のスタジオやストリートから始めるのをオススメします。

一方どのような方針であれ、やるからにはきちんとした設備のライブハウスでプレイしたい気持ちはやはり多くのバンドが持っていると思います。なので、どの段階にたどり着いたらライブハウス中心の活動をしても問題ないのかを考えていきます。

まず一番大事なのは集客です。残念ながら音楽性だの演奏技術だのは二の次です。これは単にチケットノルマの問題ではなく、音楽に限らずどんな表現であれ鑑賞者の存在なくして作品(楽曲だけでなく、ライブショウも一つの作品です)は成立しないので、集客について考えたくないというのは、人前でライブをやりたくないと言うのと同じことだからです。

意味が分からないという人は、お客さんが1人もいない会場で自分たちがワンマンライブをやると想像してみてください。「俺たちはそれでも構わないぜ!」と言う人たちは大人しくスタジオに籠もっているか、もしくは先述のようにホールレンタルを利用してください。お客さんの存在を気にしないのであればライブ環境にもこだわる必要がないはずです。

ただ集客については、まず「こうすれば絶対集まる!」という方法は存在しないと思ってください。かなりの経験があっても多くのバンドがこれに悩み続けています。ネット上では「集客コンサルタント」みたいな人を見かけたりもしますが、ああいうのは99%詐欺と考えてよいでしょう。本当に誰でも稼げるほどの集客方法が存在するのなら、まずその人が自分でバンドをやればいいわけですから。
確実に言えるのは、告知/宣伝を地道に継続しなければ、そもそもそのバンドが存在し活動しているということすら誰にも知ってもらえないということです。

たまに「良い曲作ってライブで良い演奏すれば勝手に客なんて増えるよ」と言う人がいますが、これは嘘なので信用しないでください。全くのデタラメとも言い切れないのですが、極めて説明不足の無責任な発言であると言わざるを得ません。解説していきます。

これを読んでいる中にある程度バンド経験のある人たちがどのくらいいるか分かりませんが、そういう人たちは「なぜこの曲が既に売れてないんだろう」と思う優れた曲を超絶技巧の演奏で鳴らすバンドが集客は1ケタ、という場面に何度も遭遇したことがあると思います。
そういったバンドたちが、そのときはまだ評価されてなかっただけで後に売れた、というならともかく、たいていの場合は売れるどころか集客がそれ以上増えることもなく、年をとって解散したり、活動方針をプロ志向から趣味志向に変えたりします。

なぜそんなことが起こるのかというと、当たり前のことですが、「あなたにとっての名曲が誰にとっても名曲とは限らないから」です。あなたが「すげぇ! 歴史的名曲だ!」と思った曲を、極端に言えば、世界中であなたとそれを演奏するバンドしか好きでない場合があるからです。

結局のところ、楽曲の力でお客さんが増えるということは、多くのお客さんの好みが(意図する、せざるに関わらず)それらに反映されているということです。つまり集客に繋がる「良い曲」というのは、「あなたが良いと思う曲」ではなく「聴いた人の多くが良いと思う曲」です。ここで言うまでもなく、「あなたが良いと思わなくても多くの人が良いと思う曲」もあります。そしてこれは、残念ながら、あなた自身が作った曲でさえ、そういう場合があります。
なのでプロ志向の有る無しを問わず、楽曲の力でもって集客を意識するなら「個人的な好みを超えて多くの人が良いと思うであろう曲を作る/選ぶ」必要があります。

ところが一方、当然ながらお客さんにはそれぞれ固有の好みがあります。楽曲だけでなくジャンルの好みもあります。「速くてうるさい曲は聴きたくない」という人もいます。逆に「速くてうるさい曲しか聴きたくない」という人もいます。またそれらの好みはしばしば、音楽の質の良し悪しを超えて作用します。

さて似たような趣味の人間を集めて結成したバンド内ですらしばしば意見がぶつかりあうというのに、人となりもよく分からない不特定多数のお客さんの好みなど、どうして反映させられるでしょうか。
つまり「自分の思う良い曲」をもって集客に繋げられるかどうかを自分で判断することは、原理的にほとんど不可能なのです。ただ想像し、ときには計算しながら、「失敗することを前提に」トライ&エラーを繰り返す他ありません。

その当たり前のことをバンドの方針にきちんと落とし込み、メンバー全員が納得し理解する必要があります。回り道をしましたが、要するに集客が最も大事である以上、「どんなバンドになりたいか」を考えることと「どんなお客さんにライブに来て欲しいか」を考えることは表裏一体の関係なのです。さらに言えばそれは「お客さんの反応を含め、どんなライブをやりたいか」を考えることにもなります。

なので、来てくれたお客さんを想像し、またどの曲でどんなふうに盛り上がるのかを想像しながら曲を作り/選び、アレンジし、セットリストを考えてください。MCを入れるタイミングも、自分たちが疲れそうなところに入れるのでなく、「ここでお客さんたちが一息つきたいだろう」と思うところに入れてください。もちろんそれらが上手くいくかどうかは、ステージに立って実践することでしか答えが出ないのですが。

しかしそれらをメンバーで共有出来れば「なりたいバンド像」もその一部として見えてくるはずです。これを共有出来ないといわゆる「音楽性の違いが理由で脱退/解散」が発生します。もちろん影響を受けたバンドをロールモデルとして構いません。
なおこの考え方は、音源作りメインでライブをほとんどやらないバンドであってもだいたい同様です。リスナーが曲をどのように聴くかを想像しながら作ってください。まぁこの活動の仕方で、かつ遊び志向の場合は、お客さんの反応をほぼ気にする必要のない例外的存在とも言えますが。

話を戻して、確立した「なりたいバンド像」に従って曲を作り、スタジオライブ等で地道に活動します。細部についてはまた機会を改めて述べますが、おそらく初めは友達をライブに呼ぶことになります。足を運ぶのが苦にならない環境で活動すれば、人徳にもよりますがまずまず来てもらえるでしょう。
そして来てくれた友達に、自分の目指すバンド像を積極的に語ってください。現在かけ離れていたとしても、ちゃんと延長線上にあるものなら友達は信じて、或いは楽しみにしてくれるでしょう。期待が生まれれば、現在は物足りないライブでも、成長を確かめたくてまた足を運んでくれます。
やがてライブの質が着実に向上していけば、あなたのバンド像を友達がそのまた友達に聞かせ、興味を持った人を連れて来てくれるでしょう。そこで「友達の友達」があなたの友達と同じように期待を抱き、自分でライブに来るようになれば、利害関係のない他人がお客さんになってくれたわけです。

アマチュアバンドが未熟なのは当たり前なので、お客さんは現在の力量だけでなく、期待値込みでバンドを判断することが多いです。なので「なりたいバンド像」を共有する重要性はここにもあります。先行きが曖昧な姿を見せては、そのバンドのどこにどう期待していいのかもお客さんには分かりません。
つまり多くの場合、楽曲やパフォーマンスの好みに加え、将来性を認められて初めてお客さんが付くのです。視点を変えれば、将来に期待させるような曲作りや振舞い、工夫をすればいいとも言えます。もちろん具体的なやり方は目指すバンド像によって変わってきますが、それを見出すまで、或いはお客さんが自分たちの将来に期待しているのを確信するまで、ライブハウスに出るのは控えましょう。

「いやそんなまどろっこしいことしないで最初からライブハウスに出て余所のバンドからお客さん奪えばいいじゃん」と思った人は、残念ながらナメてます。これはあくまで初心者バンド限定で言うのですが、自分たちの実力の無さを甘く見てます。

仮に何年もスタジオに籠もって修行したとしても、初めてのステージから上質なライブを出来るバンドはいません。何度もライブハウスに足を運んでいる人たちなら承知のことと思いますが、単に演奏がしっかりしていれば良いライブになるというものではありません。ライブの見せ方、運び方もパフォーマンスの一部です。実際かなりの経験を積んだバンドマンでも、新規に始めたバンドではステージ上でのメンバー感の呼吸までは把握出来ていないことが多いため、いきなり良いライブをできるケースは稀です。ましてや初心者バンドにおいては、最初の数回は必ず、自分たちが思うより遙かにみっともないライブになると思ってください。
初期のスタジオやストリートでのライブを「ライブの練習」と位置づけても良いかもしれません(キャリアのあるバンドの場合はもちろん意味合いが全く違います)。

人付き合いの得意な、人脈の豊富な人であれば、最初の数回のライブは数人どころか数十人のお客さんを呼べるでしょう。しかしそこで決して安くないチケット代と時間を使わせ、どうしようもないライブを何度も見せたらどうなるでしょうか? 当然ながら、その人たちは来てくれなくなります。
仮に将来性をある程度まで認めたとしても、現在の、そして近い将来のライブに対して金銭的・時間的に割に合わないと思ってしまえば、その人はもう自発的に足を運んではくれません。
そして一度見て聴いた上で遠ざかったお客さんを呼び戻すのは、新たにお客さんを付けるより遙かに難しいのです。

すると活動を重ね、せっかくバンドがカッコ良くなってきた頃には、初めは数十人来てくれた友達のほとんどに見放されている、という悲しい状況が訪れます。これは残念ながら本当によくあるケースです。お客さんにとっての敷居が低いスタジオやストリートを初心者バンドに勧める、一つの大きな理由です。

それでも一度出てみないことにはライブハウスでプレイすることの本当の感覚は分からないじゃないか、と思う人もいるでしょう。それは否定できません。なのでどうしてもやりたい人は、これはマナー違反を承知で言いますが、彼女(彼氏)だけを呼んで、ノルマ不足代金を勉強料と思って出演しましょう。
彼女/彼氏がいないなら、事情を説明した上で信頼できる友達だけを呼びましょう。最低でも一人は呼んでください。これはライブハウス側に対する義理ではなく、自分たちのことを良く知ってる人に観てもらわないと、ライブハウスのステージで自分たちのショウがどう見えるかを検証できないからです。

ただこれはあまり何度もやるべきものではありません。経験を積むうちにいずれ分かることですが、ライブの度に発生するノルマ不足代金を払うためにバイトするのは、楽しくバンドをやる上で本当にバカバカしいことだからです。
そうならないために、如何に支出を抑えながら活動するか、また如何に来てくれる友達を減らさずにバンドのキャリアアップを図るかを考慮しながら活動方針を決めてください。

もちろんこれは最初の方針を頑なに守る必要はありません。その都度自分たちの置かれた状況や進歩度を良く見極め、まめにミーティングを行って「バンドの温度」「なりたいバンド像」を共有し直してください。何度でもトライ&エラーを繰り返してください。

言葉にすると面倒に見えますが、長い目で見ればこの繰り返しこそがメンバー間の余計なストレスを減らして結束を増し、結果としてバンドの成長も早くなるのです。

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