初心者向けバンド講座(改訂版)-パフォーマンス向上編・1

これまで初心者バンドにはスタジオやストリートでのライブをオススメしてきましたが、しかしこの活動の仕方に徹していると、おそらく伸び悩むと思います。少なくとも「ライブの力量」においては確実にそうなります。

おそらく好きなプロのバンドのライブなどは観て参考にしているとは思いますが、ご存知の通り大きい会場で数々の仕掛けを使ったライブと、スタジオなど小さい会場のライブでは別物と考えたほうがよい部分が多々あります。
ステージの使い方はもとより、PA機材を通した上での音作りなどはやはり実際にそれらを使わないことには身につきません。
また見落としがちですが重要なことに、大人数を集客できるレベルのライブにおいては、ファンが自発的に楽しみ盛り上げてくれることによって、バンドの力量との相乗効果でより「良いライブ」になりやすいことがあります。

一方ファンの少ないアマチュアバンドでそのような効果が生まれることは稀です。スタジオではまず集客可能な人数に限界がありますし、ストリートにおいては通りすがりの人々を引き込まなければならないわけで、するとここで求められるライブの力量とは「自発的に楽しもうとしない視聴者を引き込む力」となります。そしてこれはレベルの近いバンドと自分たちを比較しないと、自分たちに何が足りないのかはなかなか見えてきません。
そこで提案したいのが(欠点には直せるものと直せないものがあるので気にしすぎるのも良くないのですが)、足りないもの、伸ばすべき部分の参考とするために、他人のライブを観に行くことです。

まずは手近なライブハウスのサイトを開き、スケジュールを確認して都合の良い日に出てるバンドを試聴しましょう。そして良いと思うバンドを見つけたら、積極的に足を運んでください。動画をアップしているバンドも多いので、事前にライブの雰囲気を予習しておくのもいいかもしれません。
もちろんチケットは安くないですが、勉強料と思えば大した金額ではありません。ぜひ自分たちのやりたい音楽と近いことをやるアマチュアバンドを実際に観て、何が自分たちと違うか研究してください。
次に、自分たちのライブ映像を誰かに頼んで撮影してもらいましょう。そしてそれを観ながら他人のバンドと比較検討してください。なお他のバンドを観る際、多くのライブハウスにはライブ映像をリアルタイムで映すモニターがあるので、実際のステージと映像とを比較しながら観るとなお参考になります。

もしこの段階で既にある程度の集客が見込めるなら、実際に自分たちがライブハウスに出てみるのもよいでしょう。対バンのステージとモニター映像を見比べ、また自分たちのライブを撮影し観れば、環境が同じであるだけに差もハッキリ現れると思います。
例えば自分がステージ上でかなり暴れているつもりでも、撮影してみると案外地味な動きしかしてなかったりするものです。これは暴れている他のバンドを観てモニターと比較することで、「どのくらい動くと映像でどう見えるか」が分かってくるので、修正するのにかなり役立つはずです。
またステージアクションだけでなくライブ全体の流れ、次の曲を始めるタイミング、MCの内容や間の取りかたなど、映像によってシビアに明らかになる「ライブの上手いヘタ」は多岐に渡ります。

デメリットを承知の上で初心者バンドにスタジオやストリートでのライブを勧めてきたのは実力とお客さんがつくまでの出費を抑えるためですが、上記のような「ライブの上手さ」が身につかないと、仮に充分優れた音楽をやっていたとしてもチケットを買って来場したお客さんの多くは「無料音源だけ聴けばいいや」と思ってしまうでしょう。タダで入場出来るスタジオライブですらも、「毎回観たい」と思ってくれるお客さんの数は頭打ちになっていくはずです。
またより上のステップに進むためには「お金を取ってショウを観てもらう」という意識をきちんと持つことも大事です。「金を払ってでも観たい」と思えばこそ、お客さんは何度も足を運んでくれるのですから。

なので他バンドを参考にする際にも、「自分が金を払ってこのライブを観たらどう思うか」と考えながら観るよう心がけましょう。もちろん自分たちのライブ映像を研究する場合も同様です。そのためにも、ある程度こなれてきたバンドは出来る限りライブを映像に残すようにしてください。
なお念のため補足しますが、映像を交えて他バンドと比較検討するのはライブショウの見せ方や流れであって、音楽を比較するのは余程クオリティに差がある(と感じた)場合を除いて避けるべきと思っています。初心者バンドがそれをやることが、ライブハウスシーンに似たような流行り物バンドが増え続ける一因になっていると僕は考えているので。まぁ余談かもしれませんが。
ただもちろん無名のアマチュアバンドでも物凄い音楽をやるバンドは数多くいるので、そういうのに出会ったならどんどん影響を受けて良いと思います。

ところで音楽の質の比較という点において非常に重要なことなのですが、自分たちで作って演奏する楽曲は当然自分たちの好みが反映されており、また思い入れがあるので自分たちにとってカッコ良く聞こえるのは当たり前です。
なので、他バンドを聴いて「まだちょっと自分たちが負けてるけど、そこそこ勝負出来てるんじゃないの?」と思うなら、それはほとんどの場合、一般聴衆からすれば「比較にならないほど負けてる」段階だと思ったほうが妥当です。
自分で聴いて「完全に勝ってる」と思うぐらいで実際にはやっと勝負になるレベルだと思ってください。
なお「音楽に勝ち負けなんて無ぇよ」と言いたい人が多いと思いますが、集客の増加を望む以上「お客さんに選ばれるか選ばれないか」という意味での勝ち負けは厳然として在ります。そこはお茶を濁さずきちんと向き合ってください。

もちろん、いかに楽曲の質を向上させるかを考える必要もあります。
そしてその方法は「自分が影響を受けたバンドに影響を与えたバンドを聴きあさる」ことに尽きます。また「自分と同じバンドからの影響を公言しているバンド」を聴くことも参考になると思います。同じ音楽を聴いてその内に何を見出すか、その差異を自覚することは自分の音楽を相対化し、過剰な思い入れを抑えセンスのアップデートに繋がります。どれほど才能に恵まれたとしても、音楽的な引き出しを謙虚に増やし続けないことには良い曲を作り続けることなど誰にも出来ません。
さらに直接影響を公言していなくても、それぞれのバンドと同時代、同世代の音楽を数多く聴いたほうがよいでしょう。自分にとって興味のあるジャンルでなくとも、それぞれが相互に(意識的にしろ、無意識的にしろ)影響を与えあってシーンを形作るのが普通のことなのですから。

もっと言えば、(広義の)ポップミュージックに時代性が反映されないということはあり得ないので、願わくばそれぞれのバンドが登場した時代背景、文化的文脈まで考察して欲しいところです。
要はそれぞれのバンドがなぜ脚光を浴び、またそれぞれの楽曲がなぜその時代に生み出されたのかを、シーンの在り方やその移り変わりの中で捉えることが出来れば、自分たちのバンドが活動する時代背景(つまり現代ですね)から自分たちのやるべき音楽の姿もおのずと見えてくるということです。

ただ実際問題として、メンバー全員がそこまでやるのは労力が多すぎるのも確かです。なのでもう少しシンプルで、かつバンドっぽいやり方として、あえて普段聴かないような曲、あまり興味のない音楽を幾つかピックアップして「この曲を自分たちの好きなバンドがカヴァーしたらどうなるか」というコンセプトでアレンジしてみるのをオススメします。
すると、自分の好きなバンドの「そのバンドらしさ」が、本来それとかけ離れた音楽との対比によってより浮き彫りになります。換言すると「なぜ【そのバンドが】素晴らしいのか」が明らかになります。
その「らしさ」「素晴らしさ」をきちんと理解することは凄く大事です。「俺このバンド好きだから似たようなことやりたい」では、その好きなバンドより豊かな才能に恵まれた場合を除いて、単なる劣化コピーで終わってしまいます。より魅力的な楽曲なんて一生作れないし、下手すると時流に合わず「まだそんな音楽やってるの?」と言われかねません。

もちろん、その素晴らしさをきちんと理解した上で、時流に合わないことも承知でそれをやりたいのなら一向に構いません。実際そういうスタンスで凄くカッコいいバンドもたくさんいます。ただ初心者バンドにとって、特にプロ志向であるなら、それがイバラの道であることはあらかじめ言っておきます。繰り返しになりますが、ポップミュージックをやる上で時代性からは逃れられないのですから。

それからもう一つ、楽曲そのものについてではないのですが、インストバンドでないのなら、歌詞を書く人は、ラノベでもいいので本を読んでください。言葉だけで表現された作品に触れて、「言葉で表現する」ということについて真剣に考えてください。
もちろん歌は歌であって言葉だけによる表現ではないわけですから、その意味では優れたセリフを多く持つマンガや映像作品もたくさん存在する以上、それらを参考にするのでも構わないし、下手なラノベよりマンガや映画の名作を鑑賞するほうがマシという意見は否定出来ません。しかしいずれにせよ「作詞家」という職業が成立する意味を考えたなら「言葉としての表現の質よりも自分の言葉で歌うことが大事」なんて恥ずかしいことは言えなくなるはずです。

現実問題として職業作詞家の存在感は薄くなる一方ですが、それがシンガーソングライターの作詞能力の向上によるものであるというより、歌詞の質を問う意識が低くなっていると考えるべきでしょう。それは違うと思うなら、試しに詞を先に書いてみてください。そして「この詞は曲をつけて歌われるべきか」と考えてみてください。

もちろん必ずしも深い思索的内容を伴った詞である必要はありません。ただそれが「言葉としての面白味」を持っているかどうかは重要です。聴かれることを前提に歌詞を書くのであれば、楽曲の質を問うのと同じように歌詞の質をも問わなければならないはずです。

もし「歌詞なんてメロディに合ってさえいればどうでもいい」と思うなら英語で歌えばいいと僕は思います。そもそも現在のポップミュージックは原則として洋楽由来であり、そして洋楽は英語の語感を前提に生まれているのですから。

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