ライブハウスのプライド(2)

前回「そのハコがどんなところなのかを可視化する努力をしたほうがいいのではないか」というところで話を区切りました。

ハコの言い分としては「そういうことはホームページで説明しているからそっち読んでくれ」ということなのかもしれませんが、そもそも興味のないものに対してわざわざホームページを見にいく酔狂な人は滅多にいません。

ホームページにしても内装の写真ぐらいアップしているでしょうが、「ライブ」を商品とするライブハウスでただの内装写真を何枚載せたところでお客さんへのアピールにはなっていません。またどのハコのページを見ても出演者側の料金体系がどうとか機材が何だとかの説明ばかりで、お客さんを対象としたコンテンツはスケジュールと地図ぐらいしか載せていないものがほとんどです。

そのスケジュールを見ても店頭立て看板と同様、出演者名の羅列と料金とスタート時間しか書いていない場合が多く、ハコのイチ押しらしいピックアップイベントですら前述のものにただ出演者の写真を加えただけ、というものもよくあります。本当にイチ押しだというならイベントの趣旨に加え各出演者の動画や試聴リンク、せめてホームページへのリンクぐらい貼ってあげればいいのにと僕は思うのですが。地図にしても道案内の記述をしている親切なケースもありますが、Googlemapをそのまま貼り付けただけのものも珍しくありません。一般の、バンドマン以外のお客さんに対してハコのファンを増やそうという意図を持たないのがライブハウス経営のスタンダードということなのでしょうか。

それとも「いや、ハコのお客さんは出演者だよ。出演者のお客さんは、出演者自身が自分で集めてくれ」ということなのでしょうか。もちろん出演者自身にお客さんが付いていなければ先は無いのですが、しかしその出演者の頑張って集めたお客さんにとって「良いライブをやるための空間=ライブハウス」が不愉快なものであっては困るわけです。

また飲食店に例えてみましょう。
あなたの料理は最高です。味にも調理手法にも盛りつけにもこだわった数々の創作料理を生み出しました。料理を映えさせる食器選びにも余念はありません。もしミシュランの調査員が来たら3つ星が付いても不思議でないという自負があります。ただ店外には店名と「ランチ¥2000、ディナー¥3500~」としか書かれていない看板があるのみです。ランチで¥2000は高めですが質とコストを考えればこの値段もやむを得ません。
一応ホームページを作ってみました。コンテンツとして店内写真と地図と電話番号、それとオススメのメニューの名前を幾つか羅列してあります。それがどんな料理であるかなんて解説しません。料理は食べてナンボなので言葉で幾ら説明しても意味がないと思ったからです。
どんな経緯があってか分かりませんが、たまにお客さんがやってきます。それらのお客さんから口コミで来店する人もいるかもしれません – 何しろ料理は最高なのですから。
しかし店内の隅々には埃が積み上がり、テーブルには食べかすの染みが付いたままです。店員は気怠そうに突っ立ったまま席案内もしませんがあなたはそれで構わないと思っています。何故ならあなたには信念があるからです。すなわち料理人は料理で勝負するのが筋なのだから、客受けを狙った小賢しいサービスなどやるべきではない、ということです。
お客さんは適当に席を選んで座りました。もちろん上着掛けや荷物カゴなんて用意していません。さすがにメニューはあります。商品名を見てもそれがどんな料理なのかお客さんには理解出来ませんが、その必要もないとあなたは思っています。なぜなら料理は食べてナンボ以下ry。
お客さんは、とりあえず来たからには、といった風情で注文しましたが自分が何を注文したのかも分かっていない様子です。だんだん不機嫌になっているのが口調や佇まいから見てとれますがあなたは気にしません。一方お客さんの注文を聞いたあなたは、その時ちょうどドライアイが気になって目薬を差していたので聞こえなかったフリをします。手が空いたところで改めて注文を受けますが、あなたの態度を見たお客さんはさらに機嫌を損ねたようです。
その様子を見てあなたも不愉快になります。「ここは料理店なんだから実際に食ってみてから文句言えや!」と思います。同時に「俺の料理でその不機嫌面ひっくり返してやる」と考えます。無理解な客のようですがこちらにも料理人としてのプライドがあるので、料理の質を以て客を黙らせるのが筋だと思っているからです。
そしてお客さんは、いざ出て来た料理を口にして驚きます。唖然としながら、さっきまでの不機嫌さが嘘のように黙々と美味しそうに食べています。あなたはそれを見て上機嫌です。「それ見たことか」と得意満面です。あなたのプライドは守られ、自信を深めます。「やはり俺の料理は間違ってない」と。
ところがそのお客さんは二度と来店しませんでした。もしかしたら仕事の出張の際たまたま立ち寄っただけで、簡単に来れるところに住んでいないのかもしれません。
ただ気がかりなのは、満足そうに帰っていったお客さんの誰一人として、二度とは来なかったということです。お客さんの一人もいない店内をぼんやり眺めながら、あなたは呟きます。
「俺の料理は最高なのに、どうして誰もリピーターにならないんだろう」

これがライブハウスのプライドです。
ここで「料理店とライブハウスは全然違う業種なんだから同列に語ることが間違ってる」とか言う人は、まぁ、筋金入りの馬鹿なので放っておきましょう。きっと脳味噌の代わりにゲロか何かが詰まっているのでしょうから、それはもう勝手に潰れろとしか言いようがないです。

とはいえ今回のシリーズはダメ出しをすること自体が目的ではないのでまだ続きます。
今後はもっと建設的な話をするつもりです。

広告

ライブハウスのプライド(2)」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: ライブハウスのプライド(4) | ロックンロール哲学者のブログ

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中