ライブハウスのプライド

ノルマの是非やライブハウス自身による集客努力についてしばしば議論されるようになり、また集客のための企業努力をするハコもちらほら現れ始めた昨今ですが、まだ業界全体の空気としては「何とかして時代の流れに抗ってやろう」みたいなハコも多いですし、また努力するつもりはあっても実際どこから手を付けていいのか分からないというハコも多いのではないか、という気もします。

なので今回から何回かに分けて、お客さんや出演者の立場で「どんなライブハウスなら興味を持つか」を考えてみます。

まず店の外観から考えたほうが良いように思います。最寄駅の駅名+店名の看板を立てただけで人が集まるなんてことは考えられません。この段階で分かるのは「そこがライブハウスである」ことだけです。店の看板と別に、その日のイベント名と出演者を立て看板に書いているハコは多いですが、それでもせいぜい「そういう名前の人たちが出演している」ことしか分かりません。

飲食店に例えて考えてみましょう。「ランチやってます」とだけ書かれた看板を見て、どんな料理があるのか全く不明なまま入店するお客さんは相当なチャレンジャーです。それでもまだ飲食店であれば、どうしても腹が減りすぎて何でもいいから食べたいけど他に店が見当たらない、という状況でお客さんがやってくることはあるかもしれません。しかし音楽ライブなんて、無くても即困るわけでもない趣味の分野でそのような看板を出していることは、普通に考えて「フラッとやってくるお客さんはいない」という前提で商売していることになります。

もちろん大音量を鳴らすライブハウスで外から内装や雰囲気が分かるようにするのは防音の関係で極めて難しいですし、またハコで扱うジャンルを完全に一本化してしまうのもリスキーなので、外観であまりイメージを固定させたくないという判断も分からないわけではありません。

ただせめてその日のイベントコンセプトであるとか、出演者それぞれがどんな音楽、或いはパフォーマンスをする人たちなのかぐらいの情報は載せておいて欲しいと思います。それで即お客さんがやってくるとは思いませんが、少なくとも通りかかった人が看板を見たときに「へぇ、ここはこういうイベントやる店なんだ」または「こういう人たちが出てるんだ」という印象を与えることは出来ます。

するとその人たちが知人、友人のバンドマンからライブに誘われた際には「そういやあの店って○○なイベントやってたな」という記憶を引っ張り出して、自分の持った印象とその誘われたライブを結びつけて考えることになります。つまり興味が強くなるわけです。もちろんそこで趣味が合わないと思ったら行かないでしょうが、行ってみてやはり趣味が合わなかったら次はないのだから同じことです。

また昔から不思議に思っているのですが、店内バーカウンターあたりでライブ映像を見れるようにモニターを用意しているハコは多いのに、それを店外、屋外は無理でもせめて受付で金を払う前の段階で見れるようにしないのは何故なのでしょう。音を出せないというならヘッドホンの一つや二つ用意すれば済むことではないかと。

テナントの構造上それが出来ない場合も多々あるのは承知してますが、それならUstやニコ生の配信環境を整えてどこでも見れるようにすればいいと思います。看板に「配信やってます」と書いてURLを併記することも出来るわけです。

まぁぶっちゃけスマホかタブレット、それとWi-Fiルータを持っていれば誰でも配信は出来るのですから「やりたい奴は自分でやれ」というのがハコ側の言い分かもしれませんが、しかし僕としては「何で出演者に集客努力を丸投げするの?」という立場をとっているのでそのぐらいはハコに用意して欲しいと思います。それで画質/音質が気にくわないという出演者がいるなら「じゃあバンドで良い機材揃えてください」と言うのは全く構わないのですが。一方で、音響や照明の設備がハコの売りになるのだとしたら「高音質・高画質で配信出来ます!」というのも立派な売りになるのではないでしょうか。

それとも「動画の生配信をやるとそれで満足しちゃって実際に足を運ぶ人が減る」とでも考えているのでしょうか。少なくとも僕は海外フェスの配信映像など観て良いライブだと思ったら「来日したらぜひ足を運びたい」と思うのですが、まぁ僕が少数派である可能性もあるわけですからそれは考え方の違いでもいいとしましょう。

ただいずれにせよ、中で何が行われているか分からないのにお客さんが「そのライブハウス」に興味を持ってくれるわけはないのですから、まずライブハウスがどういうところなのか、その店がどういうところなのかを可視化する努力をしたほうがいいのではないか、というところで次回に続きます。

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