SoundCloud(+iPhone)がアマチュアミュージシャンにもたらしたもの

数年前まではMyspaceを筆頭に(或いは音楽SNSという名の)試聴サイトが溢れかえっていました。

今では「SoundCloud」
がその大部分を駆逐しましたが、しかしリスナー視点に立って考えると試聴サイトとしての役割は他のものと大して変わりません。
ご多分に漏れずSNSと銘打っていますが、後述の曲中コメント機能を除けば特別に面白い、目新しい何かが出来るわけでもありません。Myspaceをはじめユーザーのプレイリストをシェアできるものは以前からありましたし、audioleafのようにプレイヤーを他のサイトに埋め込めるものも珍しくないのはご存知の通りです。

しかしSoundCloudは現在のところ、その手の試聴サイト(とあえて言う)の中で圧倒的に勝利しているように思えます。なぜでしょうか。おそらく答えは「各種機能が、音楽の作り手側目線で用意されていること」 だと思います。
SNSとして考えるなら「リスナーにとっての面白さ」が必要と思いますが、試聴サイトとしてなら、リスナーにとって以上に「ミュージシャンにとって使いやすい」ことが非常に大事です。そもそも曲をアップロードするのにも一苦労、というのではコンテンツが集まらないのですから。

現在サイト内はすべて英語で書かれていますが、インターフェイスはシンプルなので英語が分からない人でも直感的に「たぶんこれじゃね?」ぐらいのつもりで操作すればだいたいのことはできる…と思います。
では機能の一部とその良さについてざっと見ていきましょう。

まず対応しているファイルの形式が多いです。

現在 AIFF, WAVE, FLAC, OGG, MP2, MP3, AACが対応しており、手軽なMP3で上げるもよし、WAVEやFLACで少しでも音質にこだわるもよし。
そしてファイルの形式、トラック数を問わず合計で2時間(課金で延長可能)というのも良いアイディアだと思います。もしファイルの重さでトラック数が左右される仕様だったら、プロ・アマ問わず音質に対し神経質な人には敬遠されてしまったかもしれません。

また、「TASCAM iM2」
のようなマイクがあればiPhoneでステレオ録音したスタジオ音源を直接アップロードすることもできます。これがアマチュアミュージシャンにとっては非常に便利です。当然ながら、昔(人によっては今も?)のようにスタジオ録音したMDをロビーで何度もダビングする手間も必要ありません。
なおこのマイクは amazonで新品が5000円弱、場所によってはこれの貸し出しをするリハーサルスタジオもあるようです。
(注・iPhone5では別途変換アダプタが必要)

さらに音源制作アプリ・「garageband」 (参考リンク「iphoneは楽器です」-解説ブログ)
と組み合わせれば、iPadなりiPhoneなりでざっくり曲の大枠を作り、アプリからそのまま直接soundcloudにアップロードすることもできます。バンドであれば、非公開設定にした後メンバー内でシェアすることでいちいちデモをCDに焼いてスタジオに持って行く手間もいりません。
ちなみにギターやベースを入力する際には当然ながら変換プラグが必要になります。僕が使っているのはiRigという物ですが、どうも偽物が多く出回っているらしいので関連リンクを貼っておきます。
【IK Multimedia iRigレビュー!本物と偽物を徹底比較!】

バンドで活用する場合、さらに特筆すべきが先述の曲中コメント機能です。これは曲中の特定のポイントを秒単位で指定してコメントをつけるもので、リスナーとして使用する際には「(その曲の)この部分クールだね!」というような気軽なコメントをできます。といっても、こう書いただけでは何がどう便利なのかはピンとこないかもしれません。
しかしバンドでこれを活用すると、やはり非公開設定でアップロードしたデモやスタジオ音源に対し、他メンバーにコードの指定や、パート毎のアレンジをする上でざっくりした指示や要求を書き込むなどの使い方が考えられます。それを元に、メンバー同士が事前にメッセージを送って打ち合わせしておけば、いざスタジオに入ったとき曲を覚えてもらうために繰り返し説明する手間も省けます。
これは実際にやってみると衝撃的に便利なのでぜひ試して欲しいです。

ここまで読んで、以前からDTMをやってきたような人にとっては大部分が「何を今更」かもしれませんが、何にも増して重要なのは「使おうと思ったときにすぐ使える」ことです。先述のマイクや変換プラグも大してかさばるものではないし、なんといっても本体がiPhone(iPad)です。
ここで紹介したものに煩雑な環境設定は必要なく、iPhoneアプリを購入できる程度のコンピュータ知識があれば充分使えます。使用するのに専門知識の勉強がほぼいらない、ということの意味は言うまでもないでしょう。

という具合に、非常にお手軽ながら、これまでアマチュアミュージシャンが直面してきた数々の面倒をSoundCloudとiPhoneの組み合わせは解消してくれます。もしあなたがアマチュア/インディミュージシャンでAndroidユーザーだというなら、この組み合わせを試すためだけにiPhoneに乗り換える価値があると個人的には思っています。なおiPhoneアプリ版 SoundCloud はこちら。

今回あらためて自分で読み返してみても完全に広告記事ですが便利なのは本当ですよ。
なおSoundCloudについてこれ以上の詳細を知りたい、またはどうしても英語が無理な方はこちらを参照してください。【SoundCloudの使い方wiki】

次回のトピックはいくつか候補がありますがまだ未定です。

SNS経由で告知するということ(2)

前々回のとき「何か面白みのあることを言えれば何でもいい」と言いながら前回「なおさら音楽について語らないと」とまとめたことに矛盾を感じる人もいるかもしれません。なのでこれについて少し整理したいと思います。前回、前々回と重複する部分も多いかと思いますがご了承ください。

キーワードは「面白み」です。つまるところ言葉での宣伝というのは「自分が面白いと思うことを、他人にも面白いと思ってもらう」或いは「自分が面白いと思って語るものを、同じように面白いと思ってくれる人を求める」ことになると僕は考えます。

するとトピックが何であれ誰かにとって面白みのあることを発言できるなら、その面白みに反応した誰かがあなたを「面白みのある人」と興味を持つ可能性があります。タイミングや相手の気分など不確定要素が大きいのであくまで可能性ですが、コンスタントに発言できれば当然それは上がっていきますし、また同時に、単純に多くの人の目に触れる可能性も高まります。
そうして仮に運良くあなたに興味を持つ人が現れたとして、その人があなたの音楽についての宣伝を目にしたとき、そこでは「面白みのある人が作った音楽である」というバイアスがかかっているわけです。そうなればリンクを踏んでくれる、試聴してくれる可能性も高まります。もちろんそこで聴いた音楽を気に入ってもらえるかはまた別の問題となりますが。

ただ一般的に考えて「そのトピックが何であるか」を完全に無視することもできません。例えばあなたが地下アイドル大好きで、普段twitterでその話ばかりしているとします。さらにそれについて面白い見解を持ってもいて、あなたの発言を楽しんでいる人がたくさんいるとします。しかしあなた自身の音楽がゴリゴリのデスメタルだったりガレージパンクだったりしたら、あなたの音楽に興味を持ってもらうことは難しいかもしれません。文化的に関連性がなさすぎるからです。
とはいえ逆に、もしうまく関連づけることができるならそれは大きなチャンスにもなり得るので、可能性を見いだせる人ならトライしてみるのも悪くないと思います。

理想的なのは、あなたの音楽の歌詞(歌がある場合ですが)に登場するトピックについて面白みのある内容を発言できることです。この場合はあなたの音楽と発言がダイレクトに関係するので、よっぽど音楽に興味のない人でない限り、発言に興味を持った人はかなりの高確率で音楽にも興味を示してくれるでしょう。

一方で、最近の若い世代は文化同士の関連性や時代的な連続性など考慮しない傾向が強いようなので、どんなトピックであれ少なくとも自分の音楽に誘導できればそれは宣伝として一応成功なのではないか、と僕自身は考えていますが。そうは思えない、という人は自分の音楽と関連ありそうなトピックを頑張って考えてください。

と、ここまでが前々回の「発言が面白ければ何でもいい」の趣旨です(一部脱線してますが)。

では前回の「なおさら音楽について語らないと」についてですが、これは現実問題として語るべきトピックを持ち、またそれを面白く語れる人が一体アマチュア/インディミュージシャンの中にどれだけいるのか、という話です。
広く浅くいろんなことに興味を持っているけれど、しかしそのどれ一つとして面白く語れないというのでは、あなたという人間を他人に印象づけるのは至難の業です。宣伝するだけでも楽ではないのに、まずそこで語るためのトピックについて学ぶことからスタート、というのではいかにもミュージシャンの負担が大きすぎます。
率直に言ってしまえばそれをできるインテリをスタッフとして雇うのが一番手っ取り早いと思いますが、じゃそういう人をどこで見つけてくるのか、という問題もあるので今回そこは割愛します。

ですが実は語るべき、語ることのできるトピックをミュージシャンはみな元々持っているのです。
音楽が好きで、自分の音楽を面白いと思ってやっているのですから、うまく言語化できるかどうかはともかく、その音楽について面白みのある見解を持っていないはずがありません。ならば自分の音楽の何がどう面白いのか、或いはそこに至るために、自分の音楽に影響を与えてきた音楽がどう面白いのか、について語るのが最善ではないでしょうか。
また普段から音楽について、とりわけ自分の音楽や音楽観について語っていれば、ライブ告知や宣伝URLを目にした相手も、あなたの言葉を参照することでリアクションしやすくなると思います。

「音楽を言葉で簡単に語れるなら苦労しない」という人も多いでしょうし僕自身うまく語れるわけではありませんが、ミュージシャン側がそこに目を瞑ることによってロキノンに代表される「音楽の話をしない音楽ジャーナリズム」に好き勝手やられてしまう側面もあるので、いい加減それを防ぐ意味でも多くのミュージシャンがこれにトライすることを僕は望んでいます。
なかなか上手く書けない、と思ってもさほど気にすることはありません。熱意を持って面白みのある内容を書けば、不細工な文章でも案外面白く読めるものです。
僕が前回触れた「文章力」とは概ねそういう意味で捉えてもらって構いません。また書き続ければ誰でも技巧的な面はそこそこには上達するものですし、どうしても自分の文章に納得いかないならそのときこそ勉強すればいいと思います。
付け加えると、発言を投稿する前に一息おいてから読み返すのがオススメです。そうすれば少なくとも「自分でも何を言ってるのか分からない」みたいな文章になってしまうことは防げるので。

というのが前回についての解説となります。

なおもし考えても何も音楽に対する見解など持っていないというなら、その人はそもそも自分がなぜ音楽をやっているのか、から考え直したほうがいいかもしれません。なのでここではそういう人については考慮しないことにします。

次回は一度SNSから離れて別のトピックについて考えようと思います。未定ですが。

SNS経由で告知するということ

さて前回は、アマチュアミュージシャンが宣伝や集客に繋げうるサービスは多数あるのに、それらが使いこなされていないことについて考えましたが、その要点は「音楽を宣伝する前にそれを作る自分について宣伝しなければならない、しかしほとんどの人はそれができていない」ことでした。
これは言い換えると、ほとんどのアマチュアミュージシャンが「音楽以外の形で自分たちをアピールすることができない」ということになります。もちろんミュージシャンにとって最も重要なのは音楽なので、音源やそれを含んだ映像コンテンツにこだわるのは大事ですし、中には「他に得意な表現形態を持っているなら音楽なんてやる必要ない」という人もいるでしょう。

しかし前稿の繰り返しになりますが、何の予備知識もなくいきなり試聴URLやライブ情報を見せられても実際に聴いてくれる人、来てくれる人はほぼ皆無に近いのです。大手事務所に所属するメジャーミュージシャンならともかく、これからの活躍を目指すアマチュア/インディミュージシャンはセルフプロデュース能力に長けていないと苦しいでしょう。
レコード会社系のオーディションを受けまくるという手もありますが、それにしたって楽曲やパフォーマンスがよほどズバ抜けている場合を除いて、審査員が最後の決め手とするのはセルフプロデュース能力であることが多いと聞きます。まぁこれは現在の音楽市場ではレコード会社の人間でさえ何が売れるか予測できなくなっていることに起因するようですが。

さてこの「セルフプロデュース能力」ですが、割と勘違いされていることが多いようです。
これは、個性というものについて多くの人が誤解していることにも通じるのですが、「自分(たち)がどういうものであるかを、ときには誇張を交えながらきちんと表現し伝える能力」であって「他人と違う何かを無理やり捻り出す能力」ではありません。
なのでキャラを演じるにしても、それが自分にとって無理なく演じられるものである必要があります。もちろん抜群に演技が上手いなら演じる自分の役割を自由に選べばいいし、またヴィジュアル系やアイドルグループのようにコンセプチュアルな表現に携わる場合には、それを無理なく演じられるよう訓練を積む必要があります。

で、ここからが本題なのですが、売れることを目指して真面目にやっているミュージシャンであれば、ほぼ例外なく作品やステージに関してはこだわりを持っています。作詞作曲にアレンジはもちろん、演奏技量向上のために練習もするし、ステージ上でのキャラを上手く演じられるよう訓練を積む人も多いでしょう。楽器の音色やレコードの音質にものすごくうるさい人も珍しくありません。
そしてその、作品やステージ表現の質を上げることももちろんプロデュースワークの一環なのですが、アウトソーシングの難しいアマチュアミュージシャンにとっては、宣伝もまたその一端、というよりむしろ本体と言えるかもしれません。

ここまでは近年よく言われることなので、少なくとも知ってる、頭では理解してる、また自分たちなりに実践もしてる、という人は多いと思います。
僕が「勘違い」と言いたいのはそこではありません。先ほどの「自分がどういうものであるかをきちんと表現し伝える能力」が、アマチュアミュージシャンの宣伝において何を意味するかを勘違いしていることが多いのです。

結論から言うとそれは「文章力の重要性を理解していない」ということになります。

大金を使ってTVコマーシャルを打ったり雑誌にカラー広告を載せたりというわけにはいかないのですから、必然的に宣伝媒体はSNSの書き込みが主になります。友人知人に直接メールすることもあるでしょうがそれも同じことです。そしてそこでは原則として文章で情報を伝えなければならないのですから、「きちんと表現し伝える文章力」が必須となります。物理的にフライヤーを配布する際にはまずコミュニケーション能力が重要になりますが、渡されたフライヤーが後で改めて読まれるときを想定すれば、やはりある程度まともな文章力で書かれているほうが望ましいでしょう。
なお文章力、といっても国語の教師に突っ込まれるような細かい助詞の使い方だとか単語の厳密な意味だとか誤字がないとかそういう意味でなく、繰り返すように「伝えたいことを、きちんと伝える」ことができればそれで問題ありません。

しかし実際にtwitterやmixiボイスなどにバンドマンが書き込むのを見るとですね。
まぁとにかく個人的な主義主張もなければ音楽をやる上での哲学というかこだわりも見えてこない話ばかり、もちろん四六時中音楽の話をする必要はないし下ネタだろうがラーメンだろうがアニメだろうがそれは勝手だし自由なのだけれど、普段から人生観も音楽観も何も見えてこないのに、いざライブ告知となったときに
「凄い日です! 対バンも凄いのでぜひ!」
とか書かれても、一体何が凄いのか、そもそもこの人にとって凄いものがどういうものか見当もつきません。また音源リリース告知のときに
「今の自分たちの全てが詰まった最高の1枚です!」
みたいなのも多いけれど、今の自分たちの全てと言われても、その今の自分たちについて普段ほとんど語られない、ヘタしたら二郎の話しかしていないのだから、既にその音楽を聴いたことのある人たちしか内容について期待することもできません。パッケージ開けたら二郎の増し増しが入ってるわけじゃあるまいし、それでは宣伝にならないわけです。
「伝えたいのは音楽そのものなんだからそこに主義主張だとか音楽観だとか必要ないだろう」という声が聞こえてきそうですが、主張がないならなおさら音楽について語らないと、あなたのことを知らない人があなたの音楽に興味を持つことはできません。「伝えたいことが、きちんと伝わってない」のです。何度でも書きますが、予備知識一切なしに試聴URLが流れてきたところでリンク踏んでくれる人はまずいないと考えてください。

長くなってきたので続きます。

アマチュア/インディミュージシャンは如何にしてSNSを使いこなしていないか

前回まで、発信者側にもリスナー側にも使いやすく面白い音楽SNSについて考えてきました。
その上で日本のアマチュア/インディミュージシャンのITリテラシーの低さについて書こうと思っていたのですが、考えているうちに、単にテクノロジーの問題ではないように思われてきたので予定を変更していきます。

気づいている人も多いでしょうが、実はわざわざ新たにSNSを立ち上げなくても、既にあるサービスの組み合わせで充分に面白い情報発信の導線は作れます。

例えば試聴サイトとtwitterやmixiとの連携。これはやってない人のほうが少ないかもしれません。
facebookに至ってはバンドページ内に試聴機を埋め込むこともできるのですが、ここでは日本の状況を踏まえて除外することにします。
使い方としては、mixiコミュニティでファンとの閉じたコミュニケーションを行いつつ、twitterで開かれた宣伝や告知を行い、また個人的に絡みのあった人たちを試聴ページ、youtubeのライブ映像やPVに誘導する。その上でこまめにライブやリリースについて宣伝し、またファンの興味に応えるようブログで音楽のバックボーンや個人的な趣味や考えを語る、など。
またtwitterについては、異分野の他人といきなりコミュニケーションできるメディアなので、交渉次第ではここから写真や動画スタッフを雇うことも可能です。自分の音楽知識量やキュレーションに自信がある人ならpicotubeはそれを宣伝するのにうってつけでしょう。

という具合に、発信者側のツールはおよそ出揃っています。そして多くのミュージシャンがそれらを実行していますが、芳しい結果を出している人は、そのやっている音楽が良いものであっても稀です。
なぜならそれが、発信者にとって使いやすいだけでなく受信者側にとっても受け取りやすいものでなければいけないからです(まぁここに「閉じたサービス」としての音楽SNSの可能性、必要性を僕は見ているのですが)。

mixiコミュニティのように閉じた場であれば、いきなり自分の音楽を宣伝してもチェックしてくれる人は多いでしょう。なぜならその音楽を好きで応援してくれる人たちが既に集まっているからです。しかしtwitterのような場ではそうはいきません。いきなり知らないバンドの試聴サイトURLが流れて来ても、リンクを踏む人はまずいないと思います。
受信者側にとって、それが面白いと既に知っている、または面白そうだと思う情報以外はただの雑音でしかないからです。その受信者が音楽好きで、また仮にあなたの音楽がツボであったとしても、知らない音楽を新たに探したいと思っているのでなければやはり同様です。

つまり導線を作り、発信するだけでは不充分で、その発信した情報をきちんと受け取ってもらうにはどうするか、そこをこそ考えなければいけません。そして残念ながら良い結果の出ない人たちはほとんど、そこについての認識が甘いように見受けられます。

「自分の音楽は面白い、だから聴いて欲しい」のであれば、音楽を宣伝するより先に「自分は面白い音楽を作れる人間だ」ということを宣伝する必要があります。
その為のやり方については何でもいいと思います。ネタ系ツイートやまとめを作れる人ならそれでいいでしょう。笑わせるのが得意でなくても、スポーツに詳しいならそれについての意見を発信すればいいと思います。とにかく得意分野について面白みのある見解を持ち、深い考察や分析ができるならそれを発信することがおそらく大事です。もちろん自分の聴いてきた音楽についてでもいいし、現在のシーンについて語るのでもいいでしょう。
とにかく「この人の音楽なら面白いに違いない」と受信者に思わせることができればいいのです。
生粋の音楽好きな人たちは「それと音楽と何の関係が?」と思うかもしれませんが、あなたの音楽を宣伝するということは、あなたの音楽と、関係ない誰かを結びつける試みです。なのでまず、その誰かにとってあなたが関係ある人、興味のある人にならなければいけないのです。

その努力を放棄したまま「このサービスじゃ客増えない、使えない」というミュージシャンばかりのうちは、やはりアマチュア向け音楽SNSが成功することはないのかもしれません。

という絶望的な結論じゃ面白くないのでもうちょっと考えて続けます。

日本の音楽SNSについて思うこと(3)

前回の予告通り、なぜ日本にリッチな音楽SNSが必要と思うのか? です。

と、本題に入る前に、僕はかつてtogetterまとめでこういう記事を作ったことがあります。【続・なぜライブハウスはバンドに集客を依存するのか?】
これはウェブジャーナリストの佐々木俊尚氏に取り上げられたこともあってかなりの反響を呼び、賛否両論さまざまなリプライをもらいましたが、中でも特別気になったコメントにこういうものがありました。
「ファン主体、リスナー主体でアマチュア/インディアーティストの集客や宣伝、コンサルをサポートするNPO/NGO的なサービスが必要なのかもしれない」
僕は当時ミュージシャンとその主な発表の場であるライブハウスとの関係ばかりを考えていたので、全く別のところからのアプローチというのは思いつきませんでした。
しかし言われてみると、ファンがアーティストを育て、またアーティストがファンを育てるという本来あるべきシーンの形に、そのサービス形態は確かに合致していると思うのです。このアイディアはずっと頭に引っかかってきました。

またその一方で、多くのアマチュアミュージシャンたちを見ていつも不思議に思うことがあります。
勢いよく衰退する現在の日本の音楽業界、シーンについて度々話題にしながら、なぜ
「自分たちはその中でも売れる」と思えるのだろう? ということです。
当たり前のことですが、本当に実力や才能、楽曲の良さだけで売れるのなら、オリコンチャートのトップ10が全てジャニーズとAKBで埋まるような状況にはなりません。一歩譲ってトップ10はそうであったとしても、少なくともフェス会場で数千人のオーディエンスを集めるレベルのミュージシャンが実際にはバイトしないと食えない、などという状況になるはずはないのです。
結局、音楽ファンの質量ともに底上げを図り、市場全体を盛り上げない限り、よほど才能と運とタイミングに恵まれたごく一部のミュージシャンしか売れません。

しかし単にアマチュアミュージシャンのサポート機関といっても、よくスパムで見かける胡散臭い集客コンサルみたいに見られてしまうかもしれません。
また音楽ファンがそこにスタッフとして参加したいと考えたとしても、活動内容が不可視では二の足を踏んでしまいそうです。
そこで(だいぶ飛躍がありますが)活動内容を可視化しやすくするために、音楽SNSのひとつのサービスとしてそういう機能を設けるのはどうだろう、と考えました。とはいえそれは基本的にミュージシャン、発信側にとってのサービスです。まず音楽SNSとしてユーザーが楽しめなければ始まらないので、例の【日本で盛り上がる音楽SNSを考えてみる】をまとめた次第です。

ところでそのまとめに関連したツイートの中で、こういう記事が紹介されていたので読んでみました。【音楽SNSって音楽に特化してるからつまらないんじゃね?】
もうタイトルの時点で内容がほぼ言い表されてる気もしますが、確かに「他人の聴いてる音楽なんて基本的にどうでもよい」んですよね。
基本的に、というのはもちろんどうでもよいと思わない人もいるからなんですが、しかしそういう貪欲な音楽好きだけでサービスがペイできるほど集まる国であれば僕も初めからこんなブログ記事は書いてないわけです。
このシリーズ(1)でちょっと触れたPicoTubeやturntable.fmなんていうのはまさに、貪欲な音楽好きが数多くいる国だからこそ成り立つサービスだと思います。
ちなみにPicotubeは日本版もあるので試しに覗いてみるのもいいかもしれません。現在のところボカロ好きとアイドル好きにしかほぼ使われていませんが。

次回はそこに関連して、日本のアマチュア/インディミュージシャンのITリテラシーの低さについて触れたいと思います。

日本の音楽SNSについて思うこと(2)

前回の続きです。
一応元ネタになったまとめリンクはこちら。
【日本で盛り上がる音楽SNSを考えてみる】
アーティスト支援サービス「フリクル」法人営業担当の 金野 和磨氏にコメントをいただいてまとめ直しました。
最後のコメントが注目に値すると思うので転載します。

『メジャーレーベルの音楽を使ってフリーミアムモデルのサービスをやれば、100万人単位、場合によっては1000万人単位でユーザーを集められる。だがメジャーレーベルと交渉を失敗すれば、楽曲使用料に耐えられず事業が消滅してしまう。これが、iMeemとLalaの失敗が語る教訓である。』

これは日本の音楽SNSにとって2つのことを示唆しています。
まず1つに、欧米では音楽SNSが1000万人単位のユーザーを持ちうること。言い換えれば音楽にそれだけの需要があるということです。
事実、「音楽系のITベンチャーを志すことがシリコンバレーの若手プログラマの通過儀礼のようになっている」といいます。
一方で、日本で音楽SNSがビジネスチャンスであると考える人は稀でしょう。少なくとも1000万人単位のユーザーを集められると考える人はおそらく1人もいないと思います(もちろん人口や言語の違いもありますが)。

2つめは、メジャーレーベルの音楽を使うことを当然と考えていることです。これも日本では現状、考えられません。保守に保守を重ねたような日本の業界が相手では、交渉失敗どころかまず同じテーブルにつくことさえ至難の業でしょう。
やがて外圧に耐えかねてspotifyへの楽曲提供が始まるかもしれませんが、同じようなサービスを日本で志しても相手にされないと思います。それを実証するかのように、日本でこれまで生まれた音楽SNSはみな、アマチュア/インディミュージシャンを対象に作られています。
これは見方を変えれば、「音楽を発信する側にとっての需要はある」と判断されているのかもしれません。

上記2つからさらに1つの重要な、そして非常に残念な仮説が導かれます。
「日本において音楽は、供給が需要をはるかに上回っている」ということです。
実はそれについて、裏付けとなる個人的な経験があります。
僕はアメリカ人とオーストラリア人を交えてバンドをやっているのですが、彼らが日本に来て最初期の印象として
「こんなにたくさんの若者が楽器を背負って歩いてる国は世界のどこにもない、きっと日本人は音楽が大好きなんだ」と思ったそうです。
もちろんその後、実情を知って幻滅したそうですが。
つまり日本では、音楽好きはすぐプレイヤー/クリエイター側に回ることが多く、純粋にユーザーにとどまるケースは欧米に比べ極めて少ないということなのでしょう。

日本の現状がそうである以上、日本での音楽SNSが発信側をターゲットとして作られることは確かに理に叶っています。
しかしそのサービス運営者も当然気づいているでしょうが、結局リスナーが増えないことには発信側にとっても役に立たないのです。
なので「リスナーにとってリッチな、友人知人を巻き込みたくなるような、あるいは他の見知らぬユーザーと繋がりたくなるようなSNS体験」を持つサービスが待ち望まれていると僕は考えています。

次回は、そもそも僕がなぜ、リッチな音楽SNSが日本に必要だと考えたのか? について書こうと思います。

日本の音楽SNSについて思うこと

日本で音楽SNSの成功例ってないですよね。
せいぜいヘヴィ系バンドにaudioleafがちょこちょこ使われているぐらいで、あとはほとんど全滅に近い印象です。
facebookページを作ってその役割を果たさせることはできるけれど、そもそも「リア充専用」facebookが日本で定着すると思えません。

まず個人的な見解として、これまでの日本で試されてきた音楽SNSには根本的な構造的欠陥があると思います。
それは「SNSならではのユーザー体験」がないことです。
結局どのサービスを見ても、一定の成功を収めたように見えるsoundcloudを含めて、多少の差違はあれ単なる「試聴サイト」の域を出ていないのではないでしょうか。(soundcloudの「ミュージシャン側にとっての」使いやすさについては別稿で)
率直に言って、それぞれのミュージシャンがHPに試聴ページを設ける代わりに利用するためのものでしかないのが現状です。

一方で成功したSNS、かつてのmixiにしろ、twitterにしろfacebookにしろ、横の繋がり、ユーザー同士の出会いやコミュニケーションを促進する仕組みによって
発展してきたのだと思います。そしてそういう仕組みを持った音楽SNSはまだ、少なくとも日本には見当たりません。
海外ではspotifyを筆頭にPicoTubeやturntable.fmが盛り上がりを見せているみたいですが、日常への音楽の根付き方が全く違う日本で同じように盛り上がるかというと、ちょっと2013年現在では考えられません。レコード業界の体質という問題もあるので。

とはいえ、どうしたらそれぞれのミュージシャンのファンたちが積極的に出会ってコミュニケーションを取るような、かつ日本人の気質に合った仕組みを作れるかは分かりません。
結局のところ、各SNSを運営してる人たちも分からないんだと思います。

で、試しにtwitter→togetterでこんなまとめを作ってみました。
 【日本で盛り上がる音楽SNSについて考えてみる】

僕の問いかけに対して以下のような意見を貰えました。

・ユーザーの音楽的リテラシーを上げる仕組み。
・ユーザーが見たいイベントを企画できる仕組み。
・音楽、動画、写真、絵画、VJ、照明、PAなどを 物々交換的にコラボできる仕組み。
など。
とりわけ「おっ?」と興味を引かれたのは以下。
・レビュー書くひとも、書いたレビューを読んでもらうために宣伝が必要。ユーザーの支持を受けないと掲載できない、または短い期間で終わる。
それを受けての僕の回答がこれです。
・支持を受けたレビュアーの推すミュージシャンが、そのSNS内で目立つところに名前が出てくる。

仮に上記の仕組みが実現したとすれば以下のような流れになるはずです。
1.SNSに登録しているミュージシャンがファンにユーザー登録してもらう。
2.ファンがライブレポやディスクレビューを書き、そのミュージシャンのコミュニティ内で発表する。
3.コミュニティ内で支持を受ければ、SNS内のよりオープンな場所にそのレビューを掲載できる。
または誰でもオープンな場所に掲載できるけど、他のユーザーから支持を受けないと短い期間しか掲載されない。
4.そこで大きく支持を得たレビューで扱われたミュージシャンは、SNS内で目立つ場所に、広告バナーのように名前が出てくる。
あるいはそのミュージシャンの曲やPVが、SNSにサインインした際自動的に流れるなど。

これはさらに続きが考えられます。
5.良いレビューを書けるユーザーに、記事を書いて欲しい他のバンドが依頼する。
もちろん文章に限らず、写真や動画を撮影するひと、グッズを作るひとなどにも同じ仕組みを適用。

このアイディアの何が面白いかというと、各ミュージシャンのファンがユーザーとして積極的に活動することで、ユーザーのSNS内での役割が向上するということです。ゲームでレベルアップするみたいに。
そして自分のレベルアップが、応援するミュージシャンのSNS内での宣伝にも繋がっていくことです。

いっそ、もっと露骨にゲーム的な仕組みを取り入れてもいいかもしれませんね。
1回レビューを書いたり写真をアップすると経験値1ポイント、動画やグッズは手間がかかるので1回3ポイントとか。支持を一定数受けると5ポイント、とか。
10ポイント溜まるとユーザーのレベルが上がって、デフォルトでの課金サービスが無課金で1つ使えるようになるとか。
それで高レベルのユーザーを数多くファンとして持つと、そのミュージシャンのアカウントがレベルアップしてページが豪華になるとか、やはり課金サービスを無課金で使えるようになるとか。

なんかそういう、リアルでの行動がSNS内にゲーム的な影響を及ぼす仕組みを構築できれば盛り上がるんじゃないでしょうか。
この件もうちょっと考えてまた書きます。