SNS経由で告知するということ(2)

前々回のとき「何か面白みのあることを言えれば何でもいい」と言いながら前回「なおさら音楽について語らないと」とまとめたことに矛盾を感じる人もいるかもしれません。なのでこれについて少し整理したいと思います。前回、前々回と重複する部分も多いかと思いますがご了承ください。

キーワードは「面白み」です。つまるところ言葉での宣伝というのは「自分が面白いと思うことを、他人にも面白いと思ってもらう」或いは「自分が面白いと思って語るものを、同じように面白いと思ってくれる人を求める」ことになると僕は考えます。

するとトピックが何であれ誰かにとって面白みのあることを発言できるなら、その面白みに反応した誰かがあなたを「面白みのある人」と興味を持つ可能性があります。タイミングや相手の気分など不確定要素が大きいのであくまで可能性ですが、コンスタントに発言できれば当然それは上がっていきますし、また同時に、単純に多くの人の目に触れる可能性も高まります。
そうして仮に運良くあなたに興味を持つ人が現れたとして、その人があなたの音楽についての宣伝を目にしたとき、そこでは「面白みのある人が作った音楽である」というバイアスがかかっているわけです。そうなればリンクを踏んでくれる、試聴してくれる可能性も高まります。もちろんそこで聴いた音楽を気に入ってもらえるかはまた別の問題となりますが。

ただ一般的に考えて「そのトピックが何であるか」を完全に無視することもできません。例えばあなたが地下アイドル大好きで、普段twitterでその話ばかりしているとします。さらにそれについて面白い見解を持ってもいて、あなたの発言を楽しんでいる人がたくさんいるとします。しかしあなた自身の音楽がゴリゴリのデスメタルだったりガレージパンクだったりしたら、あなたの音楽に興味を持ってもらうことは難しいかもしれません。文化的に関連性がなさすぎるからです。
とはいえ逆に、もしうまく関連づけることができるならそれは大きなチャンスにもなり得るので、可能性を見いだせる人ならトライしてみるのも悪くないと思います。

理想的なのは、あなたの音楽の歌詞(歌がある場合ですが)に登場するトピックについて面白みのある内容を発言できることです。この場合はあなたの音楽と発言がダイレクトに関係するので、よっぽど音楽に興味のない人でない限り、発言に興味を持った人はかなりの高確率で音楽にも興味を示してくれるでしょう。

一方で、最近の若い世代は文化同士の関連性や時代的な連続性など考慮しない傾向が強いようなので、どんなトピックであれ少なくとも自分の音楽に誘導できればそれは宣伝として一応成功なのではないか、と僕自身は考えていますが。そうは思えない、という人は自分の音楽と関連ありそうなトピックを頑張って考えてください。

と、ここまでが前々回の「発言が面白ければ何でもいい」の趣旨です(一部脱線してますが)。

では前回の「なおさら音楽について語らないと」についてですが、これは現実問題として語るべきトピックを持ち、またそれを面白く語れる人が一体アマチュア/インディミュージシャンの中にどれだけいるのか、という話です。
広く浅くいろんなことに興味を持っているけれど、しかしそのどれ一つとして面白く語れないというのでは、あなたという人間を他人に印象づけるのは至難の業です。宣伝するだけでも楽ではないのに、まずそこで語るためのトピックについて学ぶことからスタート、というのではいかにもミュージシャンの負担が大きすぎます。
率直に言ってしまえばそれをできるインテリをスタッフとして雇うのが一番手っ取り早いと思いますが、じゃそういう人をどこで見つけてくるのか、という問題もあるので今回そこは割愛します。

ですが実は語るべき、語ることのできるトピックをミュージシャンはみな元々持っているのです。
音楽が好きで、自分の音楽を面白いと思ってやっているのですから、うまく言語化できるかどうかはともかく、その音楽について面白みのある見解を持っていないはずがありません。ならば自分の音楽の何がどう面白いのか、或いはそこに至るために、自分の音楽に影響を与えてきた音楽がどう面白いのか、について語るのが最善ではないでしょうか。
また普段から音楽について、とりわけ自分の音楽や音楽観について語っていれば、ライブ告知や宣伝URLを目にした相手も、あなたの言葉を参照することでリアクションしやすくなると思います。

「音楽を言葉で簡単に語れるなら苦労しない」という人も多いでしょうし僕自身うまく語れるわけではありませんが、ミュージシャン側がそこに目を瞑ることによってロキノンに代表される「音楽の話をしない音楽ジャーナリズム」に好き勝手やられてしまう側面もあるので、いい加減それを防ぐ意味でも多くのミュージシャンがこれにトライすることを僕は望んでいます。
なかなか上手く書けない、と思ってもさほど気にすることはありません。熱意を持って面白みのある内容を書けば、不細工な文章でも案外面白く読めるものです。
僕が前回触れた「文章力」とは概ねそういう意味で捉えてもらって構いません。また書き続ければ誰でも技巧的な面はそこそこには上達するものですし、どうしても自分の文章に納得いかないならそのときこそ勉強すればいいと思います。
付け加えると、発言を投稿する前に一息おいてから読み返すのがオススメです。そうすれば少なくとも「自分でも何を言ってるのか分からない」みたいな文章になってしまうことは防げるので。

というのが前回についての解説となります。

なおもし考えても何も音楽に対する見解など持っていないというなら、その人はそもそも自分がなぜ音楽をやっているのか、から考え直したほうがいいかもしれません。なのでここではそういう人については考慮しないことにします。

次回は一度SNSから離れて別のトピックについて考えようと思います。未定ですが。

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